ラブパッション
「みんないい人そうでよかった」


素直な感想を答えると、菊乃が嬉しそうに笑った。


「でしょ? うちの第一グループは、海外営業部一、仲いいんだよ」

「うん。それはなんとなく感じた」


笹谷君は味噌汁を啜りながら、私に同意するように頷いている。


「あ、でも。夏帆、ちょっとだけ気をつけてね」

「え?」


なにやら意味深に声を低める菊乃に、私はやや怯んで箸を止めた。


「多分ね。長瀬さん、夏帆のこと気に入ってる」

「……は?」


まったく予想外の忠告で、キョトンとして瞬きを返しまう。


「また……小倉はすぐそういう話」


笹谷君が呆れた口調で言葉を挟むと、菊乃は「だって」と胸を張る。


「あの人、わかりやすいもん。補佐するようになったら、気をつけた方がいいよ? その気がなければ」


菊乃が、唐揚げをパクッと口にしながら、私に横目を流してくる。
私は一瞬ドキッとして、でもすぐに何度も首を縦に振って応えた。


「でも二週間は周防さんと一緒だし。むしろ、そっちの方が心配なんじゃない?」


笹谷君が、大盛りご飯の茶碗を左手に持って、しれっと言った。
それを聞いて、朝礼時の女性たちの様子を思い出す。
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