ラブパッション
「夏帆は、どこもかしこも感じやすいね」


小さく動く唇の感触にすら、私の身体は痙攣を繰り返す。
足の爪先が、ピンと反り返った。


「あ、んっ……」


断続的に脳天まで届く刺激に耐え兼ね、私は身を捩って逃げた。
けれど、身体を向けた方向に、『逃がさない』というように、優さんの筋張った逞しい腕がトンと突く。


「夏帆」


ドキンと弾む胸をぎゅっと抱きしめ、私は身を縮めた。


「だ、だって」

「え?」

「こんなの幸せすぎて、まだ夢みたいで。明日の朝になって、やっぱり夢だった!ってなったら、すごく怖くて」


固く目を閉じ、まだ戸惑いが消えない心中を口走る。
私を見下ろしている優さんが、こくっと喉を鳴らしたのが聞こえた。


「そうなったらやだな、って。そう思ったら、優さんの指にも手にも息にも声にも、全部に敏感になって。なにされても、きゅんきゅんしちゃって、私……」

「……はあああっ」


なんだかとても太く深い溜め息を聞いて、私は恐る恐る目を開け、ゆっくり肩越しに彼を見上げた。
優さんは、ベッドに突いたのとは逆の手で顔を覆って、がっくりとこうべを垂れている。
< 222 / 250 >

この作品をシェア

pagetop