ラブパッション
最後は、彼らしい明るい笑みを浮かべて、私にサッと背を向ける。
「あ、長瀬さ……」
私の呼びかけには振り向かず、彼はまるで弾むようにセキュリティに駆けていく。
私はその背が見えなくなるまで見送って……。
「……ありがとう、ございます」
もうそこには見えない背中を脳裏に描き、深く腰を折って頭を下げた。
小さな息を吐きながら、ゆっくり頭を上げると。
「夏帆」
突然別の方向から名を呼ばれ、一瞬ビクッと肩を震わせた。
けれど、弾かれたようにその方向に顔を向ける。
「ゆ、優さん……!?」
エントランスの隅に佇んでいた、優さんを見つけた。
腕組みをしてまっすぐこちらを見ている彼の前に、慌てて駆け寄る。
「優さん。いつから……」
「ごめんな、夏帆」
彼の前で足を止めて問いかけると、途中でそんな謝罪に遮られた。
「え?」
不意を衝かれて怯み、短く聞き返す。
優さんは、ちょっと眉尻を下げて微笑み、私の頭にポンと手をのせた。
「俺が悪いのに、君まで不倫だなんて言い方をされる」
どこか自嘲気味な、寂し気な笑顔に、私はグッと言葉をのむ。
けれど。
「大丈夫です」
大きく胸を張って笑いかける。
「優さんは、私の『大丈夫』は信用できないって言うかもしれませんけど、本当に大丈夫。……だって、今は、優さんがそばにいてくれるから」
「あ、長瀬さ……」
私の呼びかけには振り向かず、彼はまるで弾むようにセキュリティに駆けていく。
私はその背が見えなくなるまで見送って……。
「……ありがとう、ございます」
もうそこには見えない背中を脳裏に描き、深く腰を折って頭を下げた。
小さな息を吐きながら、ゆっくり頭を上げると。
「夏帆」
突然別の方向から名を呼ばれ、一瞬ビクッと肩を震わせた。
けれど、弾かれたようにその方向に顔を向ける。
「ゆ、優さん……!?」
エントランスの隅に佇んでいた、優さんを見つけた。
腕組みをしてまっすぐこちらを見ている彼の前に、慌てて駆け寄る。
「優さん。いつから……」
「ごめんな、夏帆」
彼の前で足を止めて問いかけると、途中でそんな謝罪に遮られた。
「え?」
不意を衝かれて怯み、短く聞き返す。
優さんは、ちょっと眉尻を下げて微笑み、私の頭にポンと手をのせた。
「俺が悪いのに、君まで不倫だなんて言い方をされる」
どこか自嘲気味な、寂し気な笑顔に、私はグッと言葉をのむ。
けれど。
「大丈夫です」
大きく胸を張って笑いかける。
「優さんは、私の『大丈夫』は信用できないって言うかもしれませんけど、本当に大丈夫。……だって、今は、優さんがそばにいてくれるから」