ラブパッション
そこに、黒っぽいワンピースを着た玲子さんと、スーツ姿の瀬名さんを見つけた。


「あ……」


無意識に声を漏らす私に、玲子さんが視線を向ける。
彼女はわずかに口元を緩め、私に「久しぶり」と言った。


「れ、玲子さん……」


私の方は、予期していなかった再会に、挨拶もままならない。
こうして彼女と顔を合わせるのは、あのパーティー以来のこと。
離婚はお互いが幸せになるための第一歩、と聞いていても、玲子さんを前に気まずい思いも胸を過る。


目線を石畳に落として彷徨わせていると、彼女は無言でこちらに歩いてきた。
玲子さんから一歩遅れて、瀬名さんが続く。
二人は私たちの前まで来て、靴の踵をコツッと鳴らして足を止めた。
そして。


「優、ありがとう」


玲子さんが、穏やかな声でそう言った。
それを聞いて、私はおずおずと顔を上げる。
彼女は、声と同じように柔らかい笑みを、優さんに向けていた。


「あなたが、定期的にお参りに来てくれてるのは、ちゃんと知ってたわ」

「……当たり前だろ。俺にとっても、大事な親友なんだ」


優さんはやや掠れた声で答え、再び墓石を見下ろす。
それにつられるように、玲子さんもそこに視線を落とした。
優さんが供えた銀色のリングが目に留まったのか、ふっと口角を緩める。
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