ラブパッション
そのせいもあって、私はとっさに頷いてしまった。


「はい。あの……地元に」

「あ、いるんだ? もしかして遠恋頑張るの?」

「え~、やめときなって。こっちで新しい彼氏作った方が楽しいよ」


私の嘘に、みんなそれぞれに反応を返してくる。


「二十代の今を、仕事と家の往復で終わらせないためにも、近場の潤いって大事だよ」

「そうそう。まだ若いのに、なにもわざわざ遠恋にしがみつかなくても」


都会女子たちの恋愛パワーに圧倒されて、私は口を挟むこともできない。


東京って、私が思っていた以上のダイバーシティだ。
この狭く巨大な街で自然淘汰されることなく生き抜き、成功を掴み取るために、人々はエネルギッシュでパワフルになるのかもしれない。


そしてそれは、仕事だけに向けられるわけではない。
結婚してる周防さんを、軽く『奪う』なんて口にする。
都会の女性たちは、恋愛にもタフで貪欲だ。


私も、みんなみたいに強くならないと、都会に埋もれていくだけで終わってしまうんだろうけど……。
やっぱり、とんでもないとこに来ちゃった気がする。
覚束ない思いから郷愁に駆られ、私の東京勤務初日の夜は更けていった。
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