ラブパッション
週末の、プライベートタイム。
オフィスの先輩から、仕事とは関係のないお誘い。
これって、デートってことなんじゃ……。


反射的に怯んだものの、昨夜の飲み会で『地元に彼がいる』なんて大嘘ついたことを思い出し、ハッとする。
よかった。
それを理由に、長瀬さんのお誘いを不自然にならずに断れる。


「あの、ごめんなさい。私……」

「あ、知ってる。夏帆ちゃん、彼氏いるんだよね。昨日の歓迎会に行った連中から、聞いた」


なのに、大したことじゃないようにさらっと遮られ、私は出鼻を挫かれて口ごもった。


「え、っと……」

「でも、地元の人でしょ。遠恋で頻繁には会えないよね? 一人で寂しく休日を過ごすくらいなら、一緒に出かけようよ。夏帆ちゃんが行きたいとこ、どこにでも連れて行ってあげるから」


早口でグイグイと畳みかけられ、声を挟む隙もない。
結局、あわあわと言い淀んでいるうちに、招待券を手に押しつけられてしまった。


「一枚、渡しておく。週末までに返事くれればいいから」

「えっ、ちょっ……」


長瀬さんは呼び止める私にくるっと背を向け、オフィスに戻っていってしまった。
私はその場に立ち尽くし、招待券を呆然と見下ろす。
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