ラブパッション
私は這う這うの体で、マンションに帰り着いた。
エントランスのオートロックを解錠して、三階の部屋まで階段で上がる。
通路をトボトボ歩き、玄関のドアを開けた。


女子会に出かける前、最後に見たのと同じ、片付け途中の段ボールの山が私を迎えてくれる。
とても、気が休まる状態ではない。
それでも私以外に誰もいない、というだけで、今はホッとできる。


引っ越し業者さんが壁際に置いてくれたベッドに歩き、ドサッと倒れ込んだ。
メイク、落とさなきゃ。
服も着替えなきゃ、シワシワになってしまう。


わかっていても、身体はマットレスに沈みきってしまって、もう動けない……。
私は大きく肩で息をして、固く目を閉じた。


途端に目蓋の裏に浮かび上がる、さっきの男の人の端整な寝顔。
カッコいい人だったから、目に焼きついてしまった。
でも、とんでもないことをしてしまったことに変わりはない。


ありえない。
ほんと、なにやってんだろ、私。


鼻の奥の方がツンとして、ジワッと滲む涙は、不甲斐ない自分への憐れみとしか言えない――。


私、椎葉夏帆(しいばかほ)。
この四月で入社三年目を迎えた、今年二十五歳になるただのOL。
一応大手総合商社の社員で、地元の倉庫で事務員をしていた。
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