出会いはいつも突然なのです!
突然の出会い

1

「おーい、子津」

始業式からのホームルームが終わり、ちょうど家へ帰ろうかと思っていた。そんな時だ。不意に俺を呼ぶ声がした。

「なんですか?」

声の主は、今日から俺たち2年3組の担任になった鳥居あかり先生だ。
まだ25歳と若く、可愛らしい見た目から人気のある先生である。

「今日集めたこれ、職員室の私の机に置いててくれない?」

「なんで俺ですか?」

「え? 1番に目に付いたから」

そんな理由でこんな役を押し付けられたらたまったもんじゃない。
そんなことを思っているうちに、クラスメイトたちは飛び火しないようにと教室を出ていく。

「あら、子津くんだけになっちゃった。ってことで、お願いね」

鳥居先生は意地悪っぽくウインクをしながらそう言うと、教室を出ていった。

「なんで俺なんだよ」

自分の運のなさにため息を零しながら、ホームルームで集められたプリントを持つ。

「って、結構重いな」

想像していた以上に重たかったそれに、思わず言葉を洩らしながら、俺は職員室へと向かう。

「お、お勤めご苦労様!」

俺らの教室は3階にあり、職員室は2階にある。
そのため、プリントを持ったまま階段を降りなければならない。前に抱えているため、何気に足元が見づらい。慎重に階段を降りようとした時、そんか声がかけられた。

「将人ー」

陽気な声を上げたのは、俺の友達であり、クラスメイト馬間宮慎司(まみや-しんじ)だ。
類まれなる運動神経に加え、勉強面においても常に上位に名を連ねている。また、顔立ちも良いハイスペック野郎だ。

「まぁ、運が悪かったって思うしかないって」

そう言いながら、慎司は俺の肩に手をポンっと置く。

「そんなこと言うなら手伝えよ」

「やだね。てか、これは将人があかりちゃんに頼まれた仕事だろ?」

「いや、まぁ……そうなんだけど」

「だからおれは帰る」

そう言うや、慎司は勢いよく階段を駆け下りていく。どうやら、お勤めご苦労様、の一言を言うために俺を待っていたらしい。

「面倒くさいやつ」

そう零し、職員室へと向かった。




「失礼します」

軽くノックをしてから、スライドドアを開ける。
瞬間、むっとした篭った空気が、廊下に流れ出る。
少し顔を歪めるも、すぐに元に戻し、職員室の中に一歩踏み入れる。

「お前は何度言えば分かるんだ!」

同時に、男性教師の喚くような声が耳朶を打った。

始業式の日から怒られるとか、俺よりついてないじゃん。

そんなことを思いながら、入口に貼ってある教師の座席表に目を通す。その間も、男性教師の怒りは収まる様子はない。それどころかヒートアップしているように感じられる。

「可哀想に」

小さく囁くように呟き、確認した鳥居先生の机に向かう。

「まじか……」

思わず顔を顰める。
なぜなら、鳥居先生の机は激昂している男性教師の真ん前なのだ。

「俺、あそこに届けるのかよ」

嫌な予感しかしないな……。そんなことを思いながら、俺は鳥居先生の机と歩を進めるのだった。
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