出会いはいつも突然なのです!
「これ、どうするんだよ」
教室前までやって来たが、問題はそこからだった。
2人で一緒に入ればいい、そう思うかもしれないが、昨日の今日だ。
もし噂なんてものがされていたら、なんて言われることやら。
「知らないわよ。将人くんが先に入りなよ」
「いやいや、大空さんが先に入りなって」
正直、どちらも遅刻しているので先に入るも何もないのだが。それでも、同時に入るのだけは何だか違う気がした。
「いいって。将人くんが入ってよ」
「大空さんが先でいいって」
譲り合いをしている、ちょうどその時だ。
扉が開き、何やら圧を感じた。
「「あっ」」
俺たち2人の声が綺麗にリンクする。そして、恐る恐る顔を上げた先には、見覚えのある顔があった。
「え、えっと……」
「お前ら、いい加減にしろ!!」
怒号を上げたその人は、昨日大空さんに激昂していた男性教師だ。
「す、すいません」
「昨日からイチャイチャと、学校に何をしにきているのだ!」
「イチャイチャなんてしてませんけど?」
しゃがんでいた体を起こし、大空さんは男性教師に向かう。
「何を言ってるんだ!」
「ちょうど下駄箱で会ったんですよ。そうよね?」
突然話を振られ、俺は慌てて立ち上がり頷く。
「ならスっと、入ってこればいいだろ」
「2人で入ったら先生、怒るでしょ?」
「そ、そんなこと」
大空さんの一言に、男性教師は少し言葉を濁す。
「そんな屁理屈はいいんだ!」
「はいはい」
怒る男性教師に、大空さんは短くそう言い放ち、教室内へと入っていく。
「嘘はついてないですから」
小声でそう言い、俺も室内へと入る。そして、自分の席に腰を下ろした。
「え、隣?」
「そうみたいね」
先に入った大空さんが俺の隣の席に腰を下ろしている。
ここまで重なった偶然に、大空さんは戸惑った様子を見せている。
運がいいのか、悪いのやら……。
そんなことを思っている俺に、前の席の橋爪虎太郎(はしづて-こたろう)がニヤニヤとした視線を送ってくる。
これ、絶対めんどくさいやつだ……。