出会いはいつも突然なのです!
「お前達、いい加減にしろよ」
「ほんとに、たまたまなんですよ」
職員室に入るなり届いた怒りの声に、俺は思わず反論する。
「たまたまかどうかは知らんが、遅刻したのは事実だろ」
「す、すいません」
遅刻したことを言われれば謝る以外ない。俺は俯き加減で謝ると、牛見先生はため息をついた。
「分かってるならいいんだ。大空、お前もだぞ?」
「分かってます。ごめんなさい」
その謝罪に心がこもっていないは、直ぐに分かった。
それをツッコミたいのだろうが、このあともホームルームが続く。ここで怒りを炸裂させ、先生自身が授業に遅刻すれば目も当てられない。
それを分かっているからこそ、怒りを飲み込み、牛見先生は
「もういい」
と言った。
「ラッキーだった」
職員室を出てすぐ、大空さんは口を開いた。
「そうだね」
俺もそれに続く。昨日のあれを見た後で、実際覚悟はしていた。だが、実際はあの程度。ラッキーと言わずなんと言うのだろうか。
「まぁ、私だけならもっと怒られてたと思うけど」
「どうして?」
「去年からほぼ毎日遅刻してるから」
「なんで!?」
ほぼ毎日遅刻してるって分かってて何故間に合わそうとしない。
遅刻することに何も感じないのだろうか。
そんなことを思いながら、教室に戻るため階段を上がっていく。
すると、大空さんは小さい声で零す。
「仕方ないの」
「どうして?」
「家の事情」
どんな事情?
そう聞きたいけど、大空さんの哀愁漂う表情に俺は二の句を紡げなかった。
だから、小さく、ほんとに小さく。
「そっか」
と、零した。
「おっ! おかえりー」
教室を辿り着くと、虎太郎と慎司が迎えてくれた。
妖しげな笑顔を浮かべて―――
「聞いたよー」
入口に立つ俺と大空さんに詰め寄りながら、虎太郎が楽しげな声を上げた。
「何を?」
俺と大空さんを交互に見ながら、ニヤニヤを抑えられない様子の虎太郎。
「やめとけって」
そんな虎太郎を制止するように、慎司は言葉を発する。しかし、虎太郎は止まる様子はない。
「将人、告白したんだってな」
瞬間、教室は大きくざわつき、俺の思考は完全にフリーズした。
あぁ、俺の学生生活。終わった……。