やさしいキスをして
prologue
ーーーーーまだわたしが幼い頃、
たぶん小学生の低学年くらいの頃から
時々こんな夢を見るようになった。
どこかの海辺にわたしが一人で
誰かを探しながら座っているのだ。
たぶん季節は冬、
薄暗い灰色の低い雲が空一面を覆っていて…
わたしは黒のウールのコートを着ているから、
そのことから考えても「冬」なのだろう。
「ただいまあ」ーーーーー
と少しだけ明るめの声をかけても
家の中からは声だけでなく、何一つ物音すらしない。
灯りと言えばテレビやポットなどの家電の
小さなLEDの灯りだけ。
真っ暗な玄関。
真っ暗なわたしの心。
あの夢の中のわたしと同じ。
玄関のスイッチをカチッと押すと
目の前の空間は明るくはなってもーーーーーー
寒々とした明るさの中に一人放り込まれるだけのこと。
わたしーーーーー
内田華。37歳。
たぶん小学生の低学年くらいの頃から
時々こんな夢を見るようになった。
どこかの海辺にわたしが一人で
誰かを探しながら座っているのだ。
たぶん季節は冬、
薄暗い灰色の低い雲が空一面を覆っていて…
わたしは黒のウールのコートを着ているから、
そのことから考えても「冬」なのだろう。
「ただいまあ」ーーーーー
と少しだけ明るめの声をかけても
家の中からは声だけでなく、何一つ物音すらしない。
灯りと言えばテレビやポットなどの家電の
小さなLEDの灯りだけ。
真っ暗な玄関。
真っ暗なわたしの心。
あの夢の中のわたしと同じ。
玄関のスイッチをカチッと押すと
目の前の空間は明るくはなってもーーーーーー
寒々とした明るさの中に一人放り込まれるだけのこと。
わたしーーーーー
内田華。37歳。