おてんば姫の手なずけ方～侯爵の手中にはまりました～
リンネが馬に乗ってやって来たのは城から一番近い城下町だった。
いわゆる視察というやつである。もちろん、女性が視察に来るなどあり得ないことなので、これが視察であったと気づくことはなかった。

リンネはゆっくりと周囲の状況を見渡し、時にはお店のなかに入り店の主人と話をしたりした。
実際に自分の目で見て確かめるということを信条としているリンネ以外、このような視察をする者はいなかった。

町全体は比較的活気に溢れており、この国の政治がそこまで悪くないということを感じとることができた。

だいぶ日も高くなってきたので、そろそろ戻らなければ部屋にいないことがばれてしまうと来た道を戻ろうとしたとき、遠くの方から馬の嘶く声が聞こえてきた。
リンネは栗毛の馬を鞭で叩き、何か騒ぎが起きている方へと急いで向かった。

向かった先で目に入ったのは、馬と一緒に横倒しになっているどこかの貴族の馬車だった。

「一体、何があったの？」

予想していた状況よりも酷かったため、何が起きたのか周囲にいた人に聞いてみた。

「強盗です。
あの馬車から金になりそうなもの奪おうとした男達がいて…」

「男達はどっちに逃げていったの？」

リンネは馬車に乗っていた婦人の様子を確認したあと、どこに逃げていったのか聞き出した。
どうやら逃げていったのはアッサム地域の方で、いわゆるスラム街と呼ばれている地域だ。

「時期に騎士団がやって来ると思うので、フローレンス嬢、私は失礼いたします。」

フローレンスという名前の女性を立たせたあと、リンネはアッサム地域の方へ馬を走らせていった。
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