おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
エリックはどこで人が見ているのかわからなかったため、リンネとふたりきりになっても執事のふりを続けていた。

リンネを椅子に座らせたあと、手早く紅茶を用意するとリンネのもとへ差し出した。

リンネは「ありがとう」とエリックに告げ、紅茶に口をつけた。リンネが紅茶に口をつけたのを確認したエリックは一礼し、壁際へ向かった。

しばらく紅茶を堪能していたリンネは飲み終えると、壁際に控えているエリックに話しかけた。

「明日、皇帝と謁見できると聞いているけどその場に皇太子はいらっしゃるの?」

「はい、そのように聞いております」

「ありがとう」

エリックはいつもとは全く違った感情が読み取れないような口調でリンネの質問に答えた。

わざとそのようにしているとわかっているリンネはあえて深く追求するわけでもなく、ただ静かに「ありがとう」とだけ告げたのだった。

それ以降は特に会話もなく、エリックは一旦隣の部屋へと下がっていった。

本当は今すぐにでも堅苦しいドレスを脱ぎ捨てて楽なワンビースか普段着用のドレスに着替えたいと思っていたリンネだったが、さすがにそれは手伝ってもらえないので、メグが戻ってくるまでしばし読書をして待っていた。
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