おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
メグが案内されたのはクレアという後宮内で一番幼いわずか12歳の少女のもとだった。

「本日、お世話をさせていただきます、メグと申します。

何かありましたら、お声掛けください」

メグは丁寧に挨拶をしたあと壁際に控えようと一歩後ろへ下がった。

「パイが食べたい」

「パイでございますか?甘いものと食事系のものどちらにいたしましょう」

「甘い方」

来て早々パイが食べたいと言われると思っていなかったメグは驚いたものの、「かしこまりました」と短く返事をすると案内されながら厨房へと向かった。

「ここが後宮の厨房になります。
中にあるものはたぶん使っても大丈夫だと思いますが、念のため料理長に確認してください。中にいるはずなので」

メグを案内した使用人が見えなくなると、メグは厨房の中へと足を踏み入れた。

厨房では何人もの料理人が昼食の準備を進めていていた。

その作業をなるべく邪魔しないように料理長を探し、食材の使用許可をとった。

「クレア様のお世話をするのが試験だなんてあんたも運がなかったな…

あの方は気に入ったもの以外一切食べないから、ここの料理人は皆神経をすり減らしながら毎食料理している。

気に入らないものだったら容赦なく床に食べ物を落とすから料理をするものとしてはちょっとな…

おっと、こんな話をしている時間ももったいないな。

ここにあるものは何を使ってもいい、自由に好きなものを作ってくれ。

ちなみにクレア様の出身は北国らしい」

料理長は食材を好きに使っていいと言っただけでなく、クレアの出身まで教えてくれた。

メグは料理長に感謝しながらさっそくパイ作りを開始した。
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