おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
なるべく時間をかけようとゆっくり歩いていたのだが、すぐに執務室へ着いてしまった。

「リンネ、参りました…」

中から明らかに怒っているとわかるような声で「入りなさい」と言われ、リンネは中に入っていった。

「そこに座りなさい。

どうしてお前は外にいた?
今日の午前中は部屋でゆっくり休むように言ったと思うのだが?
それに、なぜ無茶をする?お前は女、しかも王女だぞ?
護衛もつけずに何をしている…
護衛がいれば何してもいいということではないが」

半分呆れるような口調で質問攻めにしたあとは、何か返答を待つと言わんばかりに、リンネをじっと見つめ出した。

「城下町の視察に行っていました。
帰ろうとしたときに、悲鳴が聞こえて考えるよりも早く行動してました…」

「誰が視察に行けと頼んだ?
誰が視察に行っていいとゆるした?
お前は女なのだから、政治に関わるなと何度言えばわかるんだ…

いい加減にしなさい、お前はもう嫁ぐのだろう?
もし、嫁いだ後も今みたいに行動してみろ。
困るのはエリック次期侯爵だぞ。
侯爵家のものが自分の伴侶をしっかりと面倒見れていないと知られたら、侯爵家の信頼はがた落ちだ。
もちろん、わが王家の信頼もお前のせいでがた落ちだ。
わかったか?お前の行動次第でこの国は潰れる。
この国を存続させたいのならばお前はおとなしくするんだ」

話は以上と言わんばかりにリンネに手で出ていきなさいと合図をすると、椅子から立ちあがり窓の方へ歩いていってしまった。
このまま話を続けることは不可能だと感じ取ったリンネはそのまま部屋を出て行こうとした。そのとき、何かを思い出したかのようにリンネの方に向き直った。

「あっ、そうだ。
レース編みの先生がもう来ていて、今応接室で待ってもらっている。応接室に寄ってから部屋に戻ること。
そして夕食の時間まで部屋を出ることを禁ずる。

もし破るようならば、また外から鍵をかけて食事もひとりでとってもらう」

リンネは「わかりました」と答え、執務室を出ていった。
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