おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
最初はこの地域がどうなっているのか恐怖心しかなかったため、リンネは目を固く閉じていた。
もしもこの地域が全然変わっていなかったらどうしようという思いが行動に表れていたのだ。

リンネの体が強張っているということを後ろから馬を操りながらでも気づいたエリックは両手で持っていた手綱を片手に持ち直し、空いた方の手でリンネを後ろから抱きしめた。

「まだ、怖いのか?
もし、怖いと思うなら別に無理に目を開けろとはいわない。
でも、きっと目を開けて現状を見た方がリンネのためになると思う」

優しいエリックの声を聞き、リンネは意を決して目を開けた。

そこに広がっていた光景はほんの数か月前とはまったくもって違っていた。
今にも壊れそうな使われていない古い建物が所狭しと軒を連ねていたはずなのに、今目の前に広がっているのはそれらが取り壊された後の広い大通りと、新しい建物を作っている姿だった。

「ここ、本当にアッサム地域だよね?」

リンネは目の前に広がる光景が信じられないのか目を瞬かせながらエリックに尋ねた。

「あぁ、そうだ。
まさかここまでちゃんと整備が始まっているとは思わなかったが、ここは間違いなくアッサム地域だ。
しかし、ここまで整備を進めているのは一体誰なんだ?
ここを大規模に変えるとなると、それ相応の財が必要になるがこの案件に賛成しているほかの貴族たちではここまで早く動き出すことは不可能だろうし…」

てっきりエリックが支援をしているものだとばかり思っていたリンネは驚きが隠せなかった。
そこで道端で雑談をしている女性たちにリンネは馬から降りて駆け寄っていった。
< 27 / 154 >

この作品をシェア

pagetop