おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
茶色の馬に乗ってやって来たのは紛れもなくリンネの弟、クリスであった。

このことに先に気がついたのはクリスの方であり、クリスは馬から降りて近くの人に馬を預けると、リンネとエリックのもとへ駆け寄った。

「姉上ではないですか…!
まさかここで姉上たちに会うとは思っていませんでした。
姉上たちも視察でここに訪れたのですか?」

まさかの人物の登場にリンネはただ、首をこくこくと頷き続けた。
そして、隣にいたエリックがリンネの代わりにいろいろ聞き始めた。

「まさか、クリス皇太子殿がここの改革を進めていらっしゃったのですか?」

「そうです、義兄上。
あっ、まだ義兄上と呼ぶのは早いですかね?

姉上がアッサム地域で大変な目にあったこと、そしてそのアッサム地域を改革しようとしていることを聞いて、私が父上に進言したのです。
私に任せてほしいことがあるので、いくらか予算を組んではくれないか、と。
そうしたら何に使うのかも聞かずに思っていたよりも多い予算を組んでくれて、そのお金でここの改革を進めています。
もし、完成したら全て姉上の指示の元だったと国王に進言するつもりで」

なんと、クリスは女性であるリンネひとりでは予算を組んでもらうことすら不可能であるとわかっていたので、エリックとはまた別の方面からリンネのことを手伝っていたのだった。

「ありがとう、クリス!
貴方が動いてくれたお陰でずいぶん早くここがいいところになるはずだわ!」

リンネはエリックが隣にいることも忘れ、全力でクリスに抱きつきた。
だがしかし、その手はあっという間にエリックによって引き離されてしまった。

「リンネ、ここは外だぞ。
例え姉弟でも周囲の人が見れば恋人に見えるかもしれない。
むやみやたらに異性に抱きつくのは……

こらっ、人の話を聞け!
外で抱きつくな!」

「てっきり、私がエリック様の前で他の男性に抱きついたから拗ねてしまったのかと思いまして…」

リンネは外で抱きつくなと言っているエリックに不意打ちに抱きついた。
一瞬驚いた様子を見せたエリックであったが、すぐにもとに戻った。
ただ、顔だけはしばらく赤いままではあったが。
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