おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
「姉上、私はもう少し奥の方まで馬で駆けながら見に行くんですけど、姉上たちも一緒にどうですか?」

預けていた馬を受取り、馬にまたがったクリスはリンネたちにこの先も一緒に行動するかを聞いてきた。

しかしその質問に答えたのは、リンネではなくエリックだった。

「いや、クリス皇太子殿はそのまま視察をお続けください。
今日、リンネがここにきているのはあくまでも私の連れであり、何よりもリンネは私のフィアンセだ。弟ではなく婚約者が一緒に付いていくのが世の常だと思っておりますので」

エリックは先ほどリンネがクリスに抱きついたことをどうやらまだ許していないようだった。強引とも思えるような理由をつけてリンネを自分の馬に乗せてしまった。

「それではクリス殿、またお会いいたしましょう」

エリックも馬にまたがると、クリスに敬礼をしてそのままアッサム地域の奥へと馬をとばした。

自分の姉を姉の婚約者に奪われただけなのに、なぜだかクリスは心に穴が開いたような少し寂しいような気持ちになった。
クリスはこのままアッサム地域の視察を続けて、再びエリックたちに会うと気まずくなってしまうと思い、馬の向きを来た方向に向かせなおし、アッサム地域の人に「また来ます」という言伝を残して去っていった。
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