おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
エリックが目を覚ましたのはそれから5日後のことだった。
ゆっくりと目を開けたエリックは自分の手を握っていたリンネの存在に気がつき、小さな声でリンネの名前を呼んだ。

「リンネ…」

蚊の鳴くような声であったにも関わらず、リンネはすぐにその声に気がついた。
リンネの様子を見てエリックが目を覚ましたことを確認したソフィアはすぐに医者を呼んだ。

「エリック様!
お目覚めになられたんですね!」

「ずっと、、、誰かが呼んでいた気がしたんだ…
その声の、、聞こえる方へ行ったら、、、
君がいた…」

まだしっかりと声を発することはできなかったが、リンネにとっては大好きな相手が目を覚ましてくれたというだけで至福の喜びを与えられたのと同じであった。

その後医者の診察を終え、もう心配はいらないと言われたときは喜びからリンネは倒れてしまいそうになった。

「本当に、よかったです。
エリック様が目覚められて本当によかった…」

まだベッドから起き上がることのできないエリックにリンネはゆっくりと抱きつくような仕草をした。
そしてエリックもゆっくりと手を動かし、リンネの体を包み込んだ。

「心配をかけたようで申し訳ない…
待っていてくれてありがとう、、、リンネ」

ふたりが嬉しそうに抱きあっているのを邪魔するものはいなかった。

だがしかし、その光景を部屋の外から睨み付けている人がひとりいた。
それは、リンネの弟、クリスであった。
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