おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
マリアはリンネとエリックに紅茶を用意したあとに、リンネの部屋を出ていった。

「リンネ、本を読んでいたところ悪い。
ちょっと明日のことで話忘れたことがあったんだ」

エリックは淹れてもらった紅茶に口をつけながら、リンネに声をかけた。

「明日は、馬車に乗って移動しよう。
申し訳ないのだが、馬に乗るのが怖いんだ。
こんなことを言えるのはリンネしかいない。男なのに馬に乗れないなんて幻滅するかもしれないが、許してほしい」

いったい何を言われるのかと思っていたリンネであったが、馬に乗れないと言われただけで、正直なところリンネもほっとしていた。

実をいうとリンネも馬に対して少なからず恐怖心をいだいており、馬が嘶く声を聞くとあの日のことをどうしても思い出してしまい、足がすくんでしまうのだった。

「よかった……
実をいうと私も馬が苦手になってしまったの…
馬が嘶く声を聞くと、あの日のことを思い出してしまって、エリック様が怪我をしたときのことが鮮明に脳裏によぎるんです…

もしもまた馬に乗って同じことが起きてしまったら、もし次はもっとひどいことが起きてしまったらって思ってしまって……」

自分の服を掴みながら告げたリンネに対して、エリックは腕をまわして抱きしめた。

「もう、リンネを心配させるようなことは絶対にしない。
だから俺を信じて、俺についてきてほしい」

「えぇ、私はいつでも貴方に付いていきます。
多分、気づいていると思うけど、貴方が寝ていた部屋に置いてあったのは貴方のことを思って、貴方の隣でいつか着るのを夢見て作ったウエディングドレスなのだから…」

リンネもエリックの背中に手をまわして、ふたりはきつく抱きしめあった。

「この件が終わったらすぐに結婚式を挙げよう。
今までに例をみないくらい立派な式を挙げよう」

「えぇ、もちろん!」

リンネとエリックは近い将来、結ばれる夢をみて目の前の問題をひとつずつ越えていこうと誓いあったのだった。
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