おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
「ここが、ぼくの家だよ……
ごめんね、汚くて……

おばあちゃん、おばあちゃんにお客さん連れてきた」

男の子が家と言ったところは、家と呼ぶにはあまりにもみすぼらしいもので、ただ壁とトタンで塞いだ屋根があるだけだった。

男の子のおばあちゃんは奥の方で布団と呼べないほどの薄い布の上に寝ていた。
健康状態を聞かなくても、あきらかに悪いということがわかった。

「突然、お邪魔して申し訳ありません。
私は、リンネ・エルディールという者です。
少しだけ、お話を伺いたいのですがよろしいでしょうか?」

リンネは決して王家の者だからといって尊大な態度はとらずに、同じ目線で話を聞こうとした。
リンネの名前に国の名前が入っているということに気付いた男の子のおばあちゃんは、家の中にいた男の子に対して、少しの間外に行くように促した。

「エルディール……
てことは王女様かなんかかい?
私が話せることなら何でも話すさ…」

「ありがとうございます!
最初から不躾な質問になってしまうのですが、ここにはどうして人が少ないのですか?
前に来たときは改革が順調に進んでいて皆生き生きしていたのに…」

最初からこんな質問をすることはよくないと思ったが、リンネは意を決して質問した。

「皆、連れていかれちまったからさ。
あの子の両親も、他の子どもの親もみんなここにはいない…
前に来たことがあるってことは、クリスって男を知ってるだろ?
その男がここに使ったお金の代わりに若いもんを連れていったんだ。
噂によれば、男は奴隷のように働かされ、女は慰みものとなってるらしい」

先程、男の子から両親は連れていかれたと言っていたが、まさか本当だったとは思っていなかった。
しかし、ここに来るまでに若い人に会っていないし、このおばあさんもそのように言うのだから信じざるを得なかった。
< 51 / 154 >

この作品をシェア

pagetop