おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
「クリス、この国において決してやってはいけないことを今すぐ述べよ」

国王はあくまでも平然を保ってクリスに問いただした。
クリスは笑いながら、そんなもの簡単だと答え出した。

「盗みを働くこと、盗みを働いたものは鞭打ちの刑に処す。
人を殺めること、人を殺めたものは懲役刑に処す。
人を売り捌いたり、人を買うこと、人身売買を行うものは国外追放処分とする。なお、人身売買を指示したものはリンデン国際刑務所に投獄する。
娼婦として自分の身体を売ること、娼婦になりしものは国の風紀を乱したとして鞭打ち、引き回しの刑に処す。

こんなの簡単ですよ、陛下。
前まで皇太子だったんですよ、俺」

してはいけないこと、そしてそれをした際にどうなるのか刑罰の内容まで完璧に言い切ったクリスはしたり顔をした。
国王は何回か頷いたあと、クリスに国外追放処分を言い渡した。

「わかっているようだな。
それでは、クリス・ジョン・マルモン・エルディールを国外追放処分とする。リンデン国際刑務所への投獄を命ずる。
罪状は人身売買の指示をしたため。

自分が何をしたかは自分が一番よくわかっているはずだ。
今後、この国に足を踏み入れることを一切禁ずる。
明日の朝までに荷物をまとめておけ。朝一にお前をリンデン国際刑務所に移送する。
ならびに、親子の縁を切り、今後一切エルディール家に関わることを禁ずる」

リンデン国際刑務所、それはエルディール王国をはじめ、周辺国家において大罪を犯したものが入る刑務所である。国によって入る罪状は変わるものの、死罪がないエルディール王国においてなによりも重い刑とされている。
一国の王族がそのような刑務所に入ることは前代未聞であった。

クリスはリンデン国際刑務所への投獄を命じられたにも関わらず、まだへらへらと笑っていた。

「気づくのが遅いんだよ!ジジィ。
馬鹿じゃねえのか?今まで気がつかないなんて。
あぁ、どこにでも行ってやるよ!リンデン国際刑務所に入ってやるよ!」

ずっと声を発することなく、国王とクリスの会話を聞いていたが、リンネはついに堪忍袋の緒がきれてしまい、クリスの頬を思いきり叩いた。
急に頬を叩かれたクリスは叩かれたときの衝撃で転んでしまったが、お構いなしにリンネは話を続けた。

「馬鹿はクリスでしょ!
いい加減にしなさいよ!アッサム地域の人々をどこに連れていったの?彼らの生活を奪うな!
少しでも手を出したのなら最後までやり遂げろよ!どうして途中で投げ出して、それだけじゃなくて追い撃ちをかけるようなことをするんだよ!

いい加減にしろ!!」

リンネはクリスに向かってずっと言いたかったことを全て伝えた。
伝え終わったリンネの頬には涙がつたっており、それほど強く今回の件に憤りを感じていたことがわかった。

「国王陛下、大変失礼いたしました。
この罰は必ず受けますので、どうかお許しください」

リンネはクリスの方から国王の方を向き直すと、静かに頭を下げた。
国王はリンネに対して罰を与えることはないと告げると、クリスを部屋に連れていくよう護衛に命令した。
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