おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
「王都から来たそうで、長旅ご苦労様でした。
王女様が泊まるにはいささか狭いかと思いますが、ここに滞在中はどうぞご自由にお使いください」

「配慮、感謝いたします」

どうして、リンネが王女であると知っているのかというと、エリックのせいであった。
リンネは身分を隠したいと言い続けていたが、エリックは身分を明かすべきだと言い、勝手にリンネの身分がこの国の王女であるということを伝えてしまったのだ。
エリックが唯一言わなかったのは、リンネが皇太子であるということだった。
本当は皇太子であるということも言いたかったのだが、まだ大臣たちに認められていないこと、なによりとこの国はまだ根深く男尊女卑思想が残っているので、言ったところで信用してもらえないと思ったからであった。

「どうして勝手に私の身分を言ったの?」

リンネはエリックにはエリックの考えがあるのだろうということはわかっていたのだが、どうしても理由を聞かずにはいられなかった。

「ここにはアッサム地域の人々を助けに来たのだろう?
まったく知らない赤の他人が奴隷を解放しろと言ったところで、そんなことを信じる人なんかいるわけない。特にリンネは女だ。
素性のわからない女のいうことにはい、そうですかと従う男なんて誰もいない。

だから、今回は身分を明かす必要があった。
もちろん、他のふたつの場所でもリンネの身分は明かした方がいい。
特に、サハール皇国では自分の口から言うべきだ。
国王の書状とかあればもっといいんだが…」

確かに、身分がわからない女のいうことを聞く人はいないと、改めて考えるとわかったリンネはエリックに「わかった」と言った。
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