おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
そしてついに話し合いの日がやってきた。この日、リンネはここにきてから初めての正装をした。そしてエリックにはいっていなかったが、スカートのひだに短剣を忍ばせた。貴族の娘は有事に備えて短剣を隠しておく場合が多いのだが、リンネはあまり好んでいなかった。そのため普段は短剣を忍ばしていないのだが、この日は万が一のことがあるかもしれないと忍ばせておいたのだ。
リンネとエリックは護衛とともに広場まで行き、ふたりが来るのを待った。護衛として一緒に来てもらっていたブランたちは広場からは見えない死角に隠れてリンネたちを見守っていた。
やがてアッサムの人々を買い取ったとみられるふたりが広場にやってきた。ふたりはリンネの姿を見るとあざ笑うかのように笑った。
「誰が俺たちのことを呼んでいるかと思えば、身なりのいい貴族じゃないか。貴族様がいったい何の用だ?」
「私たちの用はただひとつ。貴方たちが毎日こき使っているアッサムの人々を開放しなさい。この国では奴隷として人の売買を行うことは禁止されています。この国に生活している人ならば知らないはずがありません。今、解放すると約束するのならば今回の件は罪には問いません。さあ、どうしますか」
「黙って聞いていれば、女の分際ででかい口を叩いているんじゃねえ。あいつらは俺たちが金を出して買った商品で人間ではない。自分が買ったものに口出しされる筋合いはねえ!
わかったならさっさと帰りな。俺はあんたらみたいな貴族と話すことが一番嫌いなんだよ」
リンネは最初から強く言ったものの、男たちには響かなかった。それどころか、自分たちがお金を出して買ったものをとやかく言われる筋合いはないと悪態をつかれてしまった。
この状況を見て、エリックはリンネがこの国の王女であると言おうとした。しかし、リンネによって阻まれた。
「私の身分を伝えても根本的な解決にはならない。言葉と言葉でぶつかりあって人身売買がいけないことだと認めさせる。エリック様はもう少しだけ見守っていてください。私が助けを求めたら助けてください」
「わかった。俺はリンネに危機を感じたら容赦なくあいつらを切り捨てる。リンネを傷つけるものは何人たりとも許さない」
リンネたちは相手に聞こえないように小さな声でしゃべっていた。ふたりの会話は相手には聞こえなかったが、男たちはあきらかにいらいらしていた。
「何をしゃべっているのか知らないけど、話が終わりなら俺たちはここでさよならするぜ。一日でも早く伐採を終わらせなきゃならねえからこんなところで無駄な時間を過ごしているわけにはいかない」
男たちはもう話すことはないと、広場を後にしようとしたがリンネはまだ話は終わっていないと男たちを呼び止めた。
「どうしたら、アッサムの人々を解放してくれるの?」
「俺たちが買った金額の10倍の金を出してくれるなら譲ってやってもいい。
ひとりあたり銀貨15枚で30人買ったから全部で銀貨450枚、つまり金貨4枚と銀貨50枚だ。
それの10倍だから金貨45枚、そのお金を出すことができるか?」
男は挑発するように、リンネをあざ笑うかのように口元を動かした。法外な金額を要求され、隣にいたエリックは驚きを隠せなかったが、リンネはあくまで冷静を保ちながら、首につけていたネックレスを外して男に渡した。
「これは、王家の人間だけが所持することを許された特別な宝石、‘クリスタルアイ‘が含まれているネックレスよ。価値なんて簡単に付けられるようなものではないからよくわからないけど、きっと金貨100枚くらいの価値はある。
これをあげるから、今すぐアッサムの人々を開放しなさい。そしてこの地、エメからも今日中に出ていきなさい」
凛としたその態度は、男たちを説得するのに十分だった。男たちはネックレスをまじまじと見た後に、ひとつの鍵をリンネに向かって投げた。
「その鍵は足枷を外す鍵だ。俺たちは金さえ手に入れば後はどうだっていい。
二度とこの地には立ち入らねえよ!」
男たちはそのままどこかへ走り去ってしまった。
あまりにもあっけない終わり方だったので、リンネたちは少しの間呆然と立ち尽くしていたが、早くアッサムの人々を開放したいと元来た道を戻っていった。
リンネとエリックは護衛とともに広場まで行き、ふたりが来るのを待った。護衛として一緒に来てもらっていたブランたちは広場からは見えない死角に隠れてリンネたちを見守っていた。
やがてアッサムの人々を買い取ったとみられるふたりが広場にやってきた。ふたりはリンネの姿を見るとあざ笑うかのように笑った。
「誰が俺たちのことを呼んでいるかと思えば、身なりのいい貴族じゃないか。貴族様がいったい何の用だ?」
「私たちの用はただひとつ。貴方たちが毎日こき使っているアッサムの人々を開放しなさい。この国では奴隷として人の売買を行うことは禁止されています。この国に生活している人ならば知らないはずがありません。今、解放すると約束するのならば今回の件は罪には問いません。さあ、どうしますか」
「黙って聞いていれば、女の分際ででかい口を叩いているんじゃねえ。あいつらは俺たちが金を出して買った商品で人間ではない。自分が買ったものに口出しされる筋合いはねえ!
わかったならさっさと帰りな。俺はあんたらみたいな貴族と話すことが一番嫌いなんだよ」
リンネは最初から強く言ったものの、男たちには響かなかった。それどころか、自分たちがお金を出して買ったものをとやかく言われる筋合いはないと悪態をつかれてしまった。
この状況を見て、エリックはリンネがこの国の王女であると言おうとした。しかし、リンネによって阻まれた。
「私の身分を伝えても根本的な解決にはならない。言葉と言葉でぶつかりあって人身売買がいけないことだと認めさせる。エリック様はもう少しだけ見守っていてください。私が助けを求めたら助けてください」
「わかった。俺はリンネに危機を感じたら容赦なくあいつらを切り捨てる。リンネを傷つけるものは何人たりとも許さない」
リンネたちは相手に聞こえないように小さな声でしゃべっていた。ふたりの会話は相手には聞こえなかったが、男たちはあきらかにいらいらしていた。
「何をしゃべっているのか知らないけど、話が終わりなら俺たちはここでさよならするぜ。一日でも早く伐採を終わらせなきゃならねえからこんなところで無駄な時間を過ごしているわけにはいかない」
男たちはもう話すことはないと、広場を後にしようとしたがリンネはまだ話は終わっていないと男たちを呼び止めた。
「どうしたら、アッサムの人々を解放してくれるの?」
「俺たちが買った金額の10倍の金を出してくれるなら譲ってやってもいい。
ひとりあたり銀貨15枚で30人買ったから全部で銀貨450枚、つまり金貨4枚と銀貨50枚だ。
それの10倍だから金貨45枚、そのお金を出すことができるか?」
男は挑発するように、リンネをあざ笑うかのように口元を動かした。法外な金額を要求され、隣にいたエリックは驚きを隠せなかったが、リンネはあくまで冷静を保ちながら、首につけていたネックレスを外して男に渡した。
「これは、王家の人間だけが所持することを許された特別な宝石、‘クリスタルアイ‘が含まれているネックレスよ。価値なんて簡単に付けられるようなものではないからよくわからないけど、きっと金貨100枚くらいの価値はある。
これをあげるから、今すぐアッサムの人々を開放しなさい。そしてこの地、エメからも今日中に出ていきなさい」
凛としたその態度は、男たちを説得するのに十分だった。男たちはネックレスをまじまじと見た後に、ひとつの鍵をリンネに向かって投げた。
「その鍵は足枷を外す鍵だ。俺たちは金さえ手に入れば後はどうだっていい。
二度とこの地には立ち入らねえよ!」
男たちはそのままどこかへ走り去ってしまった。
あまりにもあっけない終わり方だったので、リンネたちは少しの間呆然と立ち尽くしていたが、早くアッサムの人々を開放したいと元来た道を戻っていった。