おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
「リンネ、話がある」

アッサムの人々と別れ、リンネたちが滞在しているところに戻ってきたときにエリックは神妙な顔をしてリンネの前に立ちふさがった。

リンネは何を言われるのか薄々気がついていたので、エリックをリンネの部屋の中へと招き入れた。

「どうして、無茶なことをする?
王家のネックレスをあんな得体のしれない男たちに渡すなんてどうかしている」

ひどい剣幕で怒っているエリックとは違い、リンネはあくまでも冷静だった。

「あのネックレスは偽物よ。本物はこっちのブレスレットなの。
あれについているのは別の宝石で価値も金貨5枚くらいのものなの。どうせあの男たちは宝石の価値なんてわからないのだから、ちょっと大げさに言って渡したの。
あのネックレスは私がまだ小さかった頃にちょっとおめかしがしたくて買ってもらったものだから、見た目は豪華だけど実は安いただの偽物」

まさか偽物を渡していたとは思わなかったエリックはいったん驚いたものの、「リンネらしい」と笑った。

「ごめんなさいね、事前にエリック様に伝えてなくて…
でもエリック様はすぐ顔に出てしまうから隠しておくしかなかったの。この短剣と同じようにね」

リンネは笑いながら隠していた短剣を取り出してエリックを見つめた。
エリックは先ほどよりも大きな声で笑いながら「リンネにはかなわないな、俺が考えていることのさらに上をいっている」と言った。

ふたりはその日は夜が更けるまで話をしあっていた。
そして夜が更けると、リンネの希望によりひとつのベッドで一緒に眠った。

リンネはベッドに入るとすぐに眠りについたが、エリックはその日熟睡することはできなかった。

「拷問だ、リンネが俺に抱きついてくるなんて…」

自分に抱きついてぐっすり眠っているリンネには聞こえないくらいの小さな声でエリックはつぶやいた。

エリックが眠りにつけたのは朝方になってからであり、起きたのはリンネよりも数時間後になってからだった。
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