おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
「次に行くのはスーラ村だな」

デザートの桃のコンポートを食べ終わり、食事を終えたエリックが呟いた。

「ええ、スーラ村って確かシャンドン侯爵が治めている領地の隣ですよね?
スーラ村のこと、何かご存知なのですか?」

少し遅れてデザートを食べ終えたリンネがエリックの呟きに反応して声をかけた。

「今は王都で俺も父上も生活しているが、俺が小さい頃はまだ家は伯爵家だった。それで家族みんなで自分の領地に住んでいたんだ。スーラ村の辺りを治めているのはハリス伯爵って人で伯爵には俺よりも3歳年上の息子がいた。親同士で仲が良かったこと、領地が近かったことから俺はよくハリス伯爵の息子、アランと遊んでいた。
俺が10歳になったときに父上の功績が認められて侯爵家になり、俺たち家族はそのまま王都へと引っ越した。
その後、何年かしてハリス伯爵が亡くなり、アランが家を継いだとは聞いていたが一体今はどうなっているのかなと思って…」

エリックがもとは伯爵家の跡取りだったということは国王から聞いていたので知っていたが、幼少期を王都ではない場所で生活していたことを知らなかったのでリンネは少しだけ驚いていた。

「スーラ村に行ったら、最初にアラン様のところへ行きましょう。事前に遣いをだせば私たちが着く前にアラン様には連絡がいきます。
せっかく友人に会えるのですから、この機会を大事にしましょう」

「ありがとう、リンネ。
俺もリンネにそう伝えようとしていたからなんか助かった」

エリックは照れくさそうに頭をかいていた。

「とりあえずは国王陛下に報告することが重要だ。
俺たちも今日中にここでの出来事をまとめて明日には王都へ向かおう」

ふたりは気持ちを切り替えてエメでの事後処理に動き出した。

護衛として連れてきていたブランたちには伐採が進んで荒れ始めている森林の様子を見に行ってもらい、ふたりは今回のことのあらましをまとめだした。

事後処理がすべて終わったのは夕方過ぎで、どうにか今日中に終わったという感じであった。

報告書をまとめて荷物入れにしまうと、リンネたちは食堂へと向かった。
滞在が今日までだと知った主人が最後のもてなしをしたいと声をかけてきたのだった。

「何もないところでの滞在は些か不便もあったと思いますが、ありがとうございました。
このように過度な伐採を行ったために荒れ始めた森林の再生にまで協力してくださるなんて頭が上がりません。女性というだけで、どうせ何もしないのだろうと思っておりましたが、リンネ王女はずいぶんと活動的なお方なのですね。
私は何も手伝うことができず、本当に申し訳ありません。お詫びといってはなんですが、この地域の郷土料理を用意したのでぜひ楽しんでください」

「お心遣いありがとうございます。こちらこそ愚弟のせいで広大な森林をこんな状況にしてしまい、お詫びの言葉が見つかりません。それに何よりも私が女性なのにここまで尽くしてくださり感謝しかありません。
本当にありがとうございました」
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