おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
途中まではアランの不幸な境遇に胸を撃たれながら黙って聞いていたエリックだったが、最後の方は驚いてばかりだった。
まさか、自分が兄上として親しんでいた人が今回の黒幕であったなど信じる事ができなかった。

「本当なのですか…」

嘘だと言ってほしい、ただそれだけを思って呟くようにアランに問いかけたが、アランから返ってきたのは肯定を示す頷きだった。

「この家はもうおしまいだ…
俺の暴走を止めてくれたのがエリック、お前でよかった。

俺は自分の罪をあらためるため、明日にでもここを出てどこか遠くの国に向かう。二度とこの国には戻ってこないつもりだが、後で手紙を送るからメグに渡してほしい。
最後の別れの挨拶もしないなんて男としてだめだよな…

俺は遠くから見守っている。
できればすべての人が幸せに暮らせる国を作ってほしいって王女様に伝えておいてくれ。

この国を女性や後見人のいない人だって同じように活躍できる国にしてほしい。きっと王女様ならできるだろうから、遠くからひっそりと見守らせてほしい。

そうそう、鉱山で働いている人は全員アッサム地域から連れてこられた人だから、彼らを返してあげてほしい。本当なら自分の後始末は自分がやらなければならないのだが、あまりここに長居したくなくて…」

アランの意思をくみ取ったエリックはそれ以上深く追及することもなく、静かにほほ笑むと部屋を出て行った。
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