おてんば姫の手なずけ方～侯爵の手中にはまりました～
メグに案内され入った広間で待っていたのはこの屋敷の主人ではなく、エリックただひとりだった。

「エリック様？アラン様はどちらへ行かれたのですか？」

なぜここにアランがいないのか、どうしてエリックがわざわざここに自分を呼んだのかわからなかったリンネであったが、「話があるから、座ってほしい」とエリックに言われ空いているソファーに腰を下ろした。

「リンネ、驚かないで聞いてほしい。
アラン兄さまはもうこの屋敷にはいない。アラン兄さまはまだ日が昇らぬうちにこの屋敷を出て行った」

驚くなと言われても驚かずに話を聞けるはずもない。この屋敷の主人であるアラン伯爵が知らないうちに屋敷を出て行って、広間の端で控えているメグが泣いていたのだから。

「スーラ村の鉱山でアッサム地域の人々を働かせていたのはアラン伯爵だったんだ。悪いこととは知りながら、家を再興させるために仕方なかったと…

彼は自分の罪をあらためるためにこの国を出て行った。人身売買にかかわったものは首謀者でなければ国外追放処分だから。

既にアッサムの人々を帰す手はずは用意している。後はリンネの許可が出れば彼らを元いた場所へ帰すことになる」

「それなら、今すぐにでも返してあげましょう。
家族が待っているのだろうから！」

アランがいなくなってしまったということは驚きを隠せなかったが、何よりも他の関係のない人を巻き込んだアランをリンネはすぐに受け入れることはできなかった。すぐにでもアッサムの人々を解放してあげたかったので、まずはアッサム地域へ帰すことにした。

リンネはすぐに許可を出し、それを受け取ったエリックは呼び出されたブランを通じてスーラ村へ伝わった。
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