おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
リンネたちはあれからすぐに王都へ戻ったわけではなく、今もまだアランの屋敷に滞在していた。

最後までアランが再興させることを願っていたこの家をそのまま手放さずにいられないかリンネは画策していた。

一度国外追放処分になったら二度と国に入ることは許されていないとされていたが、リンネはいつかアランに帰ってきてほしいと願っていた。

もし戻ってきたら、その時は王家所有となるこの土地をアランに返したいとリンネは考えていた。
しかし、屋敷内に様々な装飾品をとどめたままでは、管理に手間がかかってしまうので申し訳ないとは思いながら、屋敷内の荷物をすべて撤去することになったのだ。

その運び出しの指示役となったのがリンネであり、まだここを離れることができなかったのだ。

最初はすべての装飾品を運び出すことを反対していたエリックも今ではリンネに根負けし、運び出し作業を手伝っていた。

絵画など比較的小さな装飾品は隣の領地にあるシャンドン侯爵家の別荘に運ばれていった。エリックが責任をもってアランの持ち物を管理すると言い出してくれたのだった。

机や寝具などの大きな家具はさすがにシャンドン侯爵家の別荘に持っていくことができなかったので、売りに出された。
なるべく高い金額で売れるようにリンネは努力し、その売り上げたお金はすべてメグに預けた。

「いつか、アラン様に会ったときにこのお金を渡してください」

メグは「ありがとうございます」とリンネに告げ、自分の鞄の中にしまった。

すべてのものが運び出された屋敷内はとても広かった。

もうこの屋敷を後にしてもいいとリンネとエリックは考えていたが、メグがやり残したことがあるというので、あと数日滞在することになった。

「メグ、本当に手伝わなくてもいいの?
今はあなたしかいないのだからひとりでやるのは大変でしょう」

メグがやり残したことはこの屋敷をきれいにすることだった。アランがいたころは10人程度いたメイドもアランがいなくなったことを知ると、メグを除いてすべての人が去っていった。

「お心遣いありがとうございます。でも、私がひとりでやりたいのです。
なるべく早く終わらせるので、リンネ様たちはあと数日お待ちください」

「わかったわ。
でも何か必要なものとかあれば私に言って、用意できるものは用意するから」

本当は手伝いたかったがメグに遠慮され、エリックにやめなさいと言われ、結局メグのことを待つことになった。
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