君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
 
俺のその説明に、創は険しかった表情を和らげた。

完璧に和らぎきっていなかったそれは、俺を安心させようとして作ったものだろう。

 
「……そっか。悪かったな。
 でも、もう大丈夫だから。

 ――茜。おれだよ。もう、いいよ」


 
 へたり込んでいる茜と、対峙するように創はアスファルトの上に座り込んだ。
 抱きしめるほどに密着して、頑なに俯いていた茜の顔を、優しく両手で包み込んで、自分のほうに顔を向けさせる。


 そして、茜の顔を上向かせて、そう告げたんだ。




 

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