君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
 
創は俺の声に反応して、立ち止まってはくれたけれど、俺はなかなか次の言葉が告げなかった。


 言いたい事はたくさんあるのに。

 聞きたいこともたくさんあるのに。

 ありすぎて、言葉が出てこない。


「………連絡くれて、ありがとうな」


 結局沈黙を破ったのは創だった。最初にも言われた言葉が、もう一度繰り返される。

 
 そして、茜を背負ったままの不自由な手ながら、創はあやすように俺の頭に手を置いた。

 ぽん、ぽん、と。
 
 それは、とても優しいリズムで。




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