君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
「悪ぃ、タケ。そんなむせると思わなくて」
さっき思いっきり俺の背中を叩いた手のひらで、茜は背をさすってくれた。
暖かい感触がTシャツ越しに伝わってくるのが、何かリアルで。
俺は自分の顔が今までとは違う意味で赤みを帯びたのを自覚した。
「けど、タケにしては珍しかったよな。2曲目の頭、歌詞飛んだだろ?」
まぁ、すぐに復活してたけど。
そう言いながら茜はその歌を小さく歌って見せた。
適当にハミングしているだけなのに、俺がライブで歌っていたときよりも、ずっと良い歌に聞こえた。