君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―


 3人でたわいもないことを喋りながら、昇降口を出て、校門に向かっていると、


「………あれ、あいつ、この間のやつじゃね?」

「えっ、何が?あの明星の制服着た女の子?」


 茜の一気にトーンの下がった不機嫌声に、おれもその視線の先をたどる。


 そこにいたのは、確かに、この間茜が行方不明になった原因を作った張本人だった。


 遠目からでも分かる、明るい、しっかりと手入れされているのだろう綺麗な長い髪と、あの夜見た制服姿。

< 170 / 395 >

この作品をシェア

pagetop