君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
その言葉の通り、校門に寄りかかるようにして立っている彼女の横を素通りしようとした、そのとき。おれは鞄を引っ張られて、つんのめりそうになった。
「―――待って!」
校門にずっと立って、自分たちを凝視していた少女は、気付かないふりをして通り過ぎようとするのを、許してはくれなかった。
「待って」と口では頼みながらも、おれの鞄を掴んでいる手は、逃がさない!と言わんばかりで。
ぷるぷると、鞄を掴むその小さな手は震えていた。
――あー。やば。