君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 待っていても無駄だとでも言うように、茜は歩き出した。「茜!」とおれは名前を呼んでみたけれど、茜は振り返ることも立ち止まることもしなかった。

 そんなおれと茜の後姿を見比べて、逡巡していたタケは、結局茜の背中を追いかけていった。一度振り返って、盛大におれを睨みつけてから。


 タケだから、睨めるんだろうな、おれを。


 おれじゃなくて、タケが茜を追いかけていくのなんて、初めてかもしれない。


 なんとなくそのことが寂しいような気がして、おれは頭を振った。いつまでも茜の保護者を気取っているわけにも、いかないだろう。


「……と、この間の子だよね?おれに、何のよう?」


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