君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
 
 そして、その子は意を決したように顔をあげ、おれを見た。その瞳がきらきら光っていたのは、目が潤んでいたせいだろう。


「わたし、あなたのこともっと知りたい。だから、わたしと付き合って」


 そう言って、縋る色を見せながらも、その子は目をそらさなかった。大きな瞳をくりくりとさせながらおれを見ている。

 自分が断られるはずはない。

 そんな風に思っていそうな、瞳が、いつもなら気にならないのに、どうでもいいのに。今日は何故か腹立たしかった。


 ――あぁ、もう。面倒くさい。


 おれは思わず天を仰いだ。


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