君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
「あ、……ごめん。ちょっと意識飛ばしてたわ」
明弘の呆れた顔も、茜の少しだけ心配そうな顔も、そのときの俺には、遠く感じてしまっていた。
いつもなら気にならない明弘の軽口が、茜の照れたように伏目がちな笑顔が。
このとき俺には鋭く刺さった。
俺は、茜の中ではもちろんのこと、客観的に見ても、創と並んだら全く勝負にならない、ちっぽけな人間のまま、なのか。
いつになったら、あの2人に少しでも追いつくことが出来るのだろう。