君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

「ね、創。創、好きだよ」


「――――おれも、美羽が好きだよ」



 美羽は良く、おれに「好き」だと言う。

 それは、そういえば返ってくるであろうおれからの返事を、愛の言葉を期待しているようで、おれはそんな美羽を不憫に思った。


 美羽の気持ちに、いつの日か追いつけばいいと思う。

 俺の「好き」が。

 そして、いつの日か自然に美羽に「好き」だとおれから囁いてやれたらいいのにと思う。
 

 きっと、これだけは少なくとも、今のおれにとっては本当だった。



< 235 / 395 >

この作品をシェア

pagetop