君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
カウンターで美羽の分と自分の分のアルコールを買っておれは茜が用意してくれた席に戻った。
おれを見た美羽は、やはり嬉しそうに笑いかけてくれる。
茜がくれたチケットは、立見席の後の方のもので、「後ろの方が落ち着いて見れるだろ」そう言っていたけれど、おれは違うのだろうなと思った。
きっと茜は、おれと美羽が並んでいるところをステージから見たくなかったんだ。
そんなことを思って、笑ってしまう自分はたいがい終わってる。
自分の汚い思考から逃げるように、おれは美羽の話に耳を傾ける。
ころころと脈絡なく話す美羽の声は女の子特有の柔らかなもので、それはおれに安心と、ほんの少しのざわめきをいつも与えてくれていた。