君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
縋るように、おれを見て、そして最後に、はっきりと、おれを拒絶した、あのきつい眼差しを、おれは追いかけることが出来なった。
その強さを、羨ましいとは思わなかった。
ただそれが、茜を傷つけてしまわないかと思うと、すごく怖かった。嫌だった。
ライトがぱっとステージ上を照らす。
まばゆいライトに照らされて、茜が居た。
茜のもはや金色に近くなって居る傷んだ茶髪はライトの光に反射してぎらっと光る。
その横に、タケはいた。
茜の隣で、歌い出しを確認するように二人で目と目を見合して。
溢れてきた旋律は、おれの知っている、茜の声じゃなくなっていた。