君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
「え……創?」
戸惑ったような美羽の声が、心臓の上で聞こえた。
理由があったとしても、それはただの衝動だ。
気がつけば、おれは美羽の華奢な肩をきゅっと抱き寄せていた。
「創、急にどうしたの?」
「嫌だった?」
「……嫌じゃ、ないけど」
歯切れの悪い言い方をする美羽を切り捨てるようにおれはならいいじゃんと、言った。
遠目ではっきりとは分からなかったけれど、茜の笑顔が、こわばったように、おれには思えた。