君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
「―――なにやってんだ、おれ」
らしくない、と思う。気を静めるようにおれは深く息を吐いた。
茜と連絡がつかないからといって、そんなに心配する必要は、本当はないんだと思う。
ここからタケの家を経由して茜の家まで帰ったとしても、変質者に絡まれるような危険な道もない。万が一、出会ったとしても大概の場合、茜のほうが強い。
それに、ただ単に酔いが冷めてきたタケと送ったついでに飲んでいるのかもしれない。
ああ、でも、もしそうだとして。
「……おれに、それを気にする資格なんて、ないか」
自嘲気味に笑って、おれはもう一度、携帯電話を確認する。茜からの着信はなかった。