君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 そのとき足元においていた携帯電話が振動した。
 茜かと思って、おれはそれを開いた。ディスプレに表示されていたのは、美羽からのメールを告げるものだった。

 落胆すると同時に、少し、力が抜けた。

 メールの内容はたわいないもので、今日は飲み会だったよね、電話は無理かな?と可愛らしい絵文字つきでそう記されていた。
 美羽らしい、可愛らしくてふわふわしたその文面に、気持ちが多少和らいだ。


 メールって、結構その人の人柄が出るよな。
 タケなんて無駄にデコったメール送りつけてくるし、茜はめったに絵文字なんて使わない。

 和らいで空きの出来た思考回路に浮かびだされた、大切な二人の姿に、おれは呼び出そうとしていた美羽の番号を取りやめて、『今日はごめん、タケが泊まりに来てるから無理』と簡単な返信に変更させた。
 
< 283 / 395 >

この作品をシェア

pagetop