君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
美羽のことは嫌いじゃない。
本当に、嫌いじゃない。
けれど、好きなのかと聞かれたら、本当にそれは分からないんだ。
ただ、おれが彼女を傷つけていることだけは、しっかりと分かっていた。
けれどおれは、美羽の目から、茜やタケが持っていたような無邪気な純粋な光が消えていくことが、ほんの少し楽しかったんだ。
性格が悪いことは分かっていた。これは、ただの八つ当たりだ。
おれは、ただ茜にもタケにも自分の本音を言うことができなくて、ただただ二人のまっすぐな瞳がうらやましくて。
おれは臆病だったから、そのとき一番近くにいた、あたりやすかった美羽に、彼女にさえも気付かれないようにひっそりと、八つ当たりをしていただけなんだ。