君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 わざとらしく明るい茜の声が、痛む頭の中をぐるぐる回って、通り抜けていく。

 おれは、とそう言葉を募ろうとして、心臓が大きく跳ねたような気がしておれは小さく息を詰めた。

 ひどく、舌が乾いた。


「――――おれは、」


「うん。……どう、思う?」


「……おれも、茜のことは大切な親友だと、そう思ってるよ。こんな気の合う、男、茜のほかにいないよ」


 口についてでてしまえば、それはひどく簡単で、なのに胸には重い後悔のようなものが渦巻いていた。

 唇が切れたように痛んで、ああ自分がかみ締めていたのかと血の味で気がついた。

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