君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 でも。おれは。無理に自分の意見を押し通すことが出来なかった。
 
 それは、いつもどおりのおれの弱さで。

 怖かったんだ。もしかして、タケがその思いを茜に告げたんじゃないかって、おれはそれがいつも怖かった。

 いつの間にか、おれの前から茜が消えてしまうんじゃないかって、それがいつだっておれは怖いんだ。


 
「茜、」


「大丈夫だよ、おれは。

 そうにはおれより大切にしなきゃいけない人が、もういるだろ?」



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