君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

「……茜?」


「っ、悪い、そう。ちょっと二日酔い。やっぱ昨日飲みすぎたみてぇ」


 へんな電話もして、悪かったな。
 そう言い切った茜の口調はいたって普通で、ただその顔色だけがひどく悪くて、小刻みに肩は震え続けていた。


「……飲みすぎも、大概にしときなよ。もう、今日は帰ったら? 茜もしんどいでしょ」


 次の授業は、英語だった。
 この教科の担当は割かし厳しくて、居眠りをしている生徒をそのままにはさせておかないタイプだから。

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