君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 す、とおれは茜から離れた。

茜を傷つけたくはなかった。
 茜は何も悪くない。

 おれの想像があたってしまっていたとしても、違っていたとしても。

 なのに、俺おれは茜を怒鳴りつけてしまいかねないと、思った。
 だから、離れた。

 そのときの茜の気持ちなんて、おれは全く分からずに。


 いつも、おれは、これの繰り返しばっかりだ。
 そうしていつだって、後悔するんだ。
 すべては、後になってから。
 結果が出尽くしてしまったそのあとに。




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