君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 結局、茜は五時間目が終ると同時に姿を消した。
 「家に帰る」と告げた茜に、おれは気をつけてなとしか言えなかった。

 苛立ちをそのままに、おれも六時間目を残して教室を出た。
 でも茜を追いかけたわけじゃない。おれの脚は勝手に、タケがいる二年生の教室へと向かっていた。

 おれが入った途端、教室がざわとざわめいた。
 おれはそんなに厳しい顔をしていたのだろうかと思う。

 近くにいた女生徒に室内に見当たらなかったタケの居場所を聞くと、たぶん屋上じゃないかと教えられた。

 タケは良く、屋上でサボっているらしかった。

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