君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
そこに、タケはいた。
太陽から逃れるように壁が作る小さな日陰を陣取って。
片腕で目を覆ったまま仰向けで寝転がっていた。
その様が、なんだか静かな、悔恨の風景画の一部のようで、追及の言葉は喉の奥で凍り付いてしまったように出てこなくなってしまった。
タケは気配だけで俺に気がついたようだった。
腕は変わらずその目を覆ったまま、「来ると思った」と呟いた。
いつも騒々しいタケとは不釣合いなほどその声は、ひどく、静かなものだった。